手を伸ばす
「百年だけなら待ってやる」
尊大な言葉。不敵な笑み。
腰に手を当てた小さな少女が、目を大きく見開いた男をふふんと鼻でせせら笑う。
そんなところまでいつもどおりで、恋次はその言葉の意味を推し量った。
百年。
人間ならば一つの人生が始まって終わるほど長い。
死神にとっても、人生全体からしてみたら人間の十年分ぐらいには相当するだろう。
「百年だけだ。それ以上は知らぬ」
ルキアの想いを、何となく知っている。
自分の想いも、確実に知られている。
その上で、お互い肝心なことは何も言わず聞かなかった。
二人の関係はお互いにとって優しく、あまりにも喪いがたいものだったから。
けれど、もしも。
それを変えてでも前に進みたいと思ってくれたのなら。
言いたいことばかり言って去っていく背に手を伸ばして。
「百年なんて、待つ必要ねぇよ」
今、この腕に抱きしめる。